平野博文官房長官は3日間にわたる沖縄訪問を終えた10日の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の5月決着に向けて、「現場を見させてもらったのは有意義だった」と成果を強調した。だが、移設候補地に浮上している伊江島(伊江村)や下地島(宮古島市)も視察したことで、地元から疑念を持たれたのも事実。問題解決に向けた「現場重視」の姿勢が、かえって県民の不安も招いている。(宮下日出男)
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≪現場重視を強調≫
「(視察により)実情を見た上での発言ができ、意見の集約ができる」
政府の沖縄基地問題検討委員会の委員長も務める平野氏は記者会見でこう胸を張った。平野氏は訪問中、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事や米軍嘉手納基地周辺の嘉手納町などの3市町長とも会談。9日の普天間飛行場の視察では隣接する住宅地を歩いて住民の声に耳を傾け、「自分の目で見て耳で聞く」ことに努めた。
ただ、活発な行動とは裏腹に、発言は慎重の上にも慎重を期した。日米合意に基づく移設先のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を9日に訪れたときは、民主党の小沢一郎幹事長が「きれいな海を汚していいのか」と述べて、辺野古移設に慎重な姿勢を示したことを踏まえ、海の印象にはノーコメントを貫いた。自らの感想が県民に予断を与えることを懸念したためだ。
10日の記者会見でも、伊江、下地両島の上空視察について「全体の島々をほとんど見た」と述べ、離島を含めた経済振興が視察の目的と強調。普天間飛行場の新たな移設候補先の下見と受け止められることを避ける意図が垣間見えた。
こうした慎重な物言いを重ねたにもかかわらず、県民にとっては、政府高官が沖縄を訪問すること自体が「新たな県内移設先探しでは」との疑念を持たざるを得ない出来事だ。
9日の平野氏と知事との会談。移設先の具体的な言及を避け続けた平野氏だが、「知事にも決断をお願いすることもある」と述べただけで、「政府は県内移設を考えている」との憶測を呼ぶ結果となった。
そもそも、鳩山政権がこの問題で迷走を続ける中で、県民の「県外、国外移設」への期待が高まり、問題を今まで以上にデリケートなものにした側面は否めない。知事自身もかつては条件つきで日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部への移設を容認していたが、鳩山政権誕生後、県民の声に押されるように、県外移設を主張し始めた。
≪5月決着にクギ≫
こうした現状に、長島昭久防衛政務官は10日の民放番組で「鳩山由紀夫首相が(決着は)5月といっている。これを延ばすと米国政府の信頼がなくなってしまうのではないか」と警鐘を鳴らした。
しかし、平野氏の“配慮”を顧みることなく、社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は10日、ファレオマバエンガ米下院アジア太平洋地球環境小委員会委員長と都内で会談し、「県民の大半は県外、国外移設を望んでいる」と断じ、同委員会で移設問題を扱うよう要請した。
鳩山政権の迷走ぶりに、稲嶺恵一前知事のもとで副知事を務めた牧野浩隆氏は、産経新聞の取材に苦い思いを語った。
「(鳩山政権は)あれだけ県外移設を主張したのだから、過去の経緯を踏まえ、実行手段も描いていると思うのが自然だが、必ずしもそうでなかった…」
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